AIに仕事を任せるとき、最後に詰まるのは「権限」だった
AIに仕事を任せるとき、最初に気になるのは「その作業ができるか」だと思う。
文章を書けるか。コードを直せるか。調査できるか。設定できるか。
でも、実際に運用してみると、AIが止まる場所はそこではなかった。
止まったのは、能力ではなく権限だった。
「そのアカウントは渡してある」では足りない
たとえば、サイトのアクセス数を見るために Google Analytics を入れようとした。
作業としては小さく見える。計測用の設定を作って、サイトにタグを入れる。あとは数字が見えるようになればいい。AIに任せるには、ちょうどよさそうな仕事に見える。
でも、そこで止まった。
理由はコードではない。
GCPを触れることと、Google Analytics を触れることは別だった。
同じGoogleの中にあるので、人間の感覚では「Googleまわりの権限はある」と思ってしまう。プロジェクトも見える。コマンドラインから確認できる状態もある。だから、なんとなく進められそうに見える。
GCPのプロジェクトを触れることと、Google Analytics のアカウントやプロパティを作れることは同じではない。さらに、APIで作業するには、Analytics 側の権限だけでなく、OAuth の認証範囲も必要になる。
ここが、AIに任せるときに見落としやすいところだった。
人間から見ると「Googleは渡してある」に見える。でも実際の作業では、GCP、Google Analytics、ブラウザの本人確認、APIの認証範囲がそれぞれ別の扉になっている。
AI社員に必要なのは、能力表ではなく権限表
AI社員を作るとき、「このAIは何ができるか」を並べたくなる。
記事を書く。コードを直す。SNS投稿案を作る。請求書を整理する。予約を確認する。こういう能力表はわかりやすい。
でも実務では、能力表だけでは足りない。
そのAIは、どのアカウントを見られるのか。どのサービスを操作できるのか。どこまでなら自動で進めてよくて、どこから人間の確認が必要なのか。
つまり、AI社員には「能力表」と同じくらい「権限表」が必要になる。
今回のように、GA設定そのものは小さな作業でも、そこにはいくつもの境界がある。
- GCPのプロジェクトは見られる
- Google Analytics は別サービスとして権限がいる
- OAuth同意は本人が画面で確認する
- 一時的な認証URLはチャットに貼らない
- タグ設置やコード変更はAIが進められる
小さな作業に見えるほど、この境界は雑に扱われやすい。
止まったことは失敗ではなく、設計ポイント
コマンドを実行すると、再認証が必要になった。ブラウザで本人が許可する画面が出る。
ここは、AIが勝手に進めてはいけない場所だ。
もちろん、AIは手順を説明できる。どの画面で何を許可するかも案内できる。必要なAPIや権限の名前も調べられる。
でも、本人確認そのものは人間が見るべきだ。ブラウザに出る同意画面には、一時的な認証情報が含まれることもある。そういうURLをチャットに貼ってしまうと、余計なリスクが生まれる。
だから、ここでの正しい分担はこうなる。
- AIは、必要な設定と作業手順を整理する
- 人間は、ブラウザで本人確認と許可をする
- AIは、その後のタグ設置や確認作業を続ける
全部を自動化するのではなく、本人確認の境界で一度止まる。これは不便というより、安全な設計だと思う。
「渡してあるはず」と「実際に操作できる」は違う
業務をAIに任せるとき、つまずきはだいたいこの形をしている。
「権限は渡してあります」 「でも操作できません」
この二つは矛盾していない。渡したつもりの権限と、作業に必要な権限が違うだけだ。
たとえば、請求をまとめたい。無料枠の範囲で済ませたい。既存のGoogleアカウントで管理したい。こういう事情があると、アカウントやプロジェクトを増やさずに進めたくなる。
その判断自体は自然だ。ただ、その分だけ権限の境界は見えにくくなる。
GCPは触れる。でもGAは別。GAの画面は見られる。でもAPI作成には別の権限がいる。API権限はある。でもOAuthの同意は本人が必要。こういう小さな分岐が重なる。
自動化の前に、権限の地図を作る
今回の学びは、GA設定の細かい手順そのものではない。
大事なのは、AIに作業を任せる前に「どこまでAIが進めてよくて、どこから人間が確認するか」を分けることだった。
今回なら、権限の地図はこうなる。
- 情報整理: AIができる
- 必要な権限の洗い出し: AIができる
- タグ設置やコード変更: AIができる
- OAuth同意画面の確認: 人間がやる
- 一時的な認証URLの扱い: チャットに貼らない
- 計測開始後の確認: AIと人間で見る
こう分けておけば、「AIに任せたのに止まった」ではなく、「ここは人間確認の工程」として扱える。
AI運用で大事なのは、できることを増やすだけではない
AIを使うと、できることは増える。調査も速い。コード変更も速い。設定の候補もすぐ出る。
でも、できることが増えるほど、止める場所も大事になる。
本人確認、支払い、外部公開、個人情報、認証情報。こういう場所は、AIが進めるほど危ない。だから、作業を止める境界を先に設計しておく。
今回のGA設定は小さな作業だった。でも、小さいからこそ、AI運用の本質が出た。
コードより先に、権限で止まる。
そしてその止まり方を、失敗ではなく設計に変える。AIに仕事を任せるなら、ここがかなり大事だと思う。
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